豆知識
キリスト教式について
今回は、日本でキリスト教式の葬儀がどのように行われているかについて説明させていただきます。
キリスト教の葬儀とは
キリスト教というと、教会での結婚式をイメージされたり、実際にその場に参加された経験のある方はおられると思いますが、キリスト教の葬儀に参列されたことのある方は少ないのではないでしょうか。
実際、日本の葬儀における宗教の割合は仏教の教えにもとづいた「仏式」が8割近くを占めており、キリスト教式の葬儀は1割に満たないと言われております。
宗教が違えば、「死」に対する考え方も異なります。日本では「死」を「穢れ」や「縁起の悪いもの」、「悲しいお別れ」といったイメージで捉えることが多いですが、キリスト教では、死後に人は神のもとに召されて、いずれくる復活の日まで安らかに眠るとされ、「死」を永遠の安息として捉えるそうです。
キリスト教徒の割合が多い欧米諸国では、日本と比べると火葬よりも埋葬(土葬)が多いのは、この「復活の日」に備えるためとも言われております。
ここからは、日本でのキリスト教の宗派として分けられる「カトリック」と「プロテスタント」について説明致します。
カトリックについて
日本でのカトリックというと、主にキリスト教で最も大きい宗派である「ローマカトリック教会」を指します。
カトリックの葬儀の意味としては、故人様の罪を許し、神に委ねていずれ迎える復活を祈ることとされています。葬儀の進行を務める聖職者は「司祭(または神父)」と呼ばれます。
カトリックの葬儀の流れについては、以下の通りです。
【通夜】
・通夜のつどい
本来カトリックでは通夜について決まったかたちはございませんが、日本では参列者が故人様に挨拶できる場として集まることが多いです。
通夜のつどいを行う際は、司祭から聖書の朗読、献花を行うことが多いです。
【葬儀】
・入堂
聖歌が流れる中で司祭が教会内に入堂し、参列者は起立してそれを迎えます。
その後、お棺とご遺族様が続いて入堂します。
・開式の辞
司祭がお棺に聖水をそそぎ、開式を告げる挨拶を行います。
・ミサ
司祭から聖書の朗読、説教が行われます(言葉の典礼)。ご遺族様は、パンとブドウ酒を捧げます(感謝の典礼)。
・聖体拝領(せいたいはいりょう)
故人様の復活を祈る儀式で、司祭から信者へパンが分け与えられます。
【告別式】
・入堂
葬儀の際と同様です。
・聖歌
参列者全員で聖歌を斉唱します。
・弔辞、弔電の紹介
故人様の経歴や、弔辞、弔電を紹介します。
・献花
司祭、喪主様、ご遺族様、一般の参列者の順にお花をたむけます。献花は、祭壇前の台にたむける場合と、故人様が入られているお棺にたむける場合があります。
・喪主挨拶
喪主様から参列者へ、感謝の挨拶を行います。
以上のように、カトリックでは原則、ミサを行う葬儀と、参列者から献花をしていただく告別式とを分けて行われることが多いです。
プロテスタントについて
プロテスタントは、16世紀中頃に起きた宗教改革以降に伝統的なキリスト教から分かれた宗派の総称です。
プロテスタントでは聖書を重んじ、儀式の内容としてはカトリックと比べて自由で形式的ではありません。プロテスタントの葬儀の意味としては、神へに感謝とご遺族様を慰めることとされています。葬儀の進行を務める聖職者は「牧師」と呼ばれます。
プロテスタントの葬儀の流れについては、以下の通りです。
【通夜】
・前夜式
内容はカトリックの「通夜のつどい」とほとんど同じです。牧師による聖書の朗読、説教、献花などが行われます。
【葬儀・告別式】
・入場
オルガンの演奏の中、牧師、お棺、ご遺族様の順に式場へ入場します。参列者は起立してそれを迎えます。
・聖書の朗読
牧師が聖書を朗読するので、参列者は黙祷します。
・讃美歌
賛美歌を参列者全員で歌います。
・牧師の説教
牧師が故人様の経歴を紹介し、その後説教を行います。
・弔辞、弔電の紹介
弔辞、弔電を紹介します。
・祈祷
故人様が安らかにお過ごしただけるよう牧師が祈りを捧げ、再度参列者全員で賛美歌を斉唱します。
・献花
牧師、喪主様、ご遺族様、一般の参列者の順にお花をたむけます。
・喪主挨拶
喪主様から参列者へ、感謝の挨拶を行います。
以上のように、プロテスタントでは葬儀と告別式を分けず行うことが多いですが、プロテスタントはさらに細かい宗派に別れていますので、儀式の流れや内容は葬儀をお願いする教会に確認をするとよいでしょう。
キリスト教式の参列マナー
儀式の流れで紹介致しました「献花」について作法を紹介致します。
1.ご遺族様に一礼した後、祭壇前まで進みお花を両手で受け取ります
2.献花台の前へと進み、神に対し一礼し、お花の茎の根本側を祭壇に向けて献花台に捧げます
3.黙祷を行います
4.ご遺族様に一礼し、元の席へ戻ります
献花は用意された台に捧げることもあれば、故人様の入られたお棺の中に捧げることもあり、教会ごとに若干作法が異なります。また参列者の人数が多い場合は、全員で黙祷のみ行うこともあります。
キリスト教式の葬儀に参列する場合、ご遺族様にかける言葉にも気を配りましょう。
冒頭で説明した通り、キリスト教において「死」は永遠の安らぎと捉えられ、不幸なことではありません。そのため、「お悔みの言葉」ではなく、故人様の安らかな眠りを祈るような「お祈りの言葉」をかけることがよいでしょう。
キリスト教式の葬儀でも香典のようにご遺族様へお金を包んで渡すことがありますが、その際には白無地の封筒を用い、表書きには「御花料」と、裏側には自身の名前を書きます。
御花料(香典)のほか、供花についても仏式と異なる部分がございます。キリスト教式では供花を受け付けていないことがありますので、まずは教会や葬儀会社に確認をとりましょう。供花を受け付けている場合は、仏式のように祭壇横にお花を生けるのではなく、供花は籠にお花を盛り付けて用意されます。また、供花を出された方の名前は張り出されません。教会や葬儀会社によっては、供花を出された方の名前を一覧にしてご遺族様に渡すことがございます。
最後までご覧いただきまして、有難うございます。
日本でよく見る仏式の葬儀とは、「死」に対する考え方が違い、それによる儀式やマナーの違いもございます。キリスト教式の葬儀に参列される際は、予め教会や葬儀会社に確認をとることをおすすめします。